Vengineerの戯言

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MIT の Vivienne Sze さんの Energy-Efficient Deep Learning を眺めてみた

@Vengineerの戯言 : Twitter
SystemVerilogの世界へようこそすべては、SystemC v0.9公開から始まった 

はじめに

この記事では、MITの Vivienne Sze さんの講演ビデオを観て、そこから得られたものをまとめたものです。

Vivienne Sze さんの研究室は、こちら。ENERGY-EFFICIENT MULTIMEDIA SYSTEMS GROUP
www.rle.mit.edu

Vivienne Sze さんの経歴は、

学士の時に、IC Design Engineerとして働き、博士後にTIで3年近く半導体エンジニアとして働いていたようです。その時にビデオコーデックとかをやっていたので、現在の研究室のタイトルに MULTIMEDIA が入っているのかもしれません。その後、過去の発表資料を眺めたら、最初が動画関連が多かったので、最初からMULTIMEDIAの研究をやっていて、今はDeep Learningを道具として使っているって感じなんだと思いました。

このビデオ「Energy-Efficient AI」を観れば、現在どんな研究をやっているかが分かるようだ。

  • Energy-Efficient AI with Cross-Layer Design (Algorithms)
  • Specialized Compute Hardware (Compute Architectures & Circuits : Eyeriss
  • Robot Localization Under a tenth of a Watt (コラボ with Sertac Karaman), Navion chip
  • Low Energy Robotics (Lighter than Air Vehicles), Miniature Satellites, Origami Robots
  • Neuropsychological Testing (コラボ with Thomas Heldt), eye movement

EEMS Groupに出てくるYoutubeのビデオ

講演ビデオにも出てきますが、現在の研究対象は

  • Energy-Efficient Deep Learning, Computer Vision, and Autonomous Navigation
  • Mobile Health Monitoring
  • Accelerating Super Resolution
  • Next-Generation Video Coding

です。

Energy-Efficient Deep Learning に関係するビデオ

この記事では、Energy-Efficient Deep Learning に関するものを追っていきます。
Energy-Efficient Deep Learningに関しては、Efficient Processing of Deep Neural Networksという書籍が出ていて、このブログでも紹介しました。
vengineer.hatenablog.com

Youtubeのサイトは、
www.youtube.com
この他に、Youtubeで「Vivienne Sze」で検索すると、20以上の講演ビデオが出てきます。

Vivienne Sze さんの研究成果で特に有名なのは、Eyeriss Projects ですね。推論用アクセラレータです。
最初の論文が2016年3月なので、あたしが TensorFlow XLAに興味を持つ1年も前に出ています。
Eyeriss は名前は知っていましたが、詳しく調べることは今までありませんでした。この機会の一番最初の論文から読み返すことにしました。

最初の論文は、ISCA 2016。「Eyeriss: A Spatial Architecture for Energy-Efficient Dataflow for Convolutional Neural Networks
この時の著者は、Yu-Hsin Chen、Joel Emer、Vivienne Szeの3人。
Yu-Hsin Chen さんは MITで博士を取ってから、NVIDIA => Facebook です。
Joel Emer さんは、2005年からMITと関わっていますね。Compaq => Intel => NVIDIA です。なんと、Intelの時は、このブログでも紹介したLEAP FPGAにかかわっていたようです。Bluespec:MIT & Intelの事例(LEAP)

65nmで実際のInference用チップとして開発して Eyeriss 。12*14個のPE + 108KBのSRAM(バッファ) + DRAM I/F。
各PEは200MHzで動作し、0.5KBのレジスタファイルを持っている。
各PEの中に、input feature/weight/output feature のどれを保持すれば、電力効率が良くて、Latencyが短いのかをベンチマークして、Row Stationary (RS) が一番いいと。
この RS が一番いいというのは、最初に観た何本かのビデオに出てくるんです。どうして、RSが一番いいのかと。。。Eyeriss の論文とスライドを観てやっとわかりました。
ISCA 2016のスライド。に、その RS が一番いいという説明が丁寧に載っています。
Eyeriss (この論文)では、DRAMから・へのデータ移動時には圧縮・伸長を行っています。Run Lengthなのでリアルタイムに処理ができるし、回路規模もそんなにないです。これにより、DRAMへのアクセスを減らせることができます。

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Eyeriss system architecture

EyerissはCNN/FCの電力効率とLatencyをよくするためのものであったが、その後のMobile Device用のモデル(MobileNetなど)ではCNNのサイズが変わったため、Eyeriss の特徴を生かししきれなくなり、
Eyeriss v2: A Flexible Accelerator for Emerging Deep Neural Networks on Mobile Devices を発表。
著者は、Eyerissの3名 + 1名 Tien-Ju Yang さん です。(Yu-Hsin Chen さん の後輩っぽい)

下図が Eyeriss と Eyeriss v2 の違いです。GLB(Global Buffer)が1つからGLB cluster として分散。2D Mesh Network にて、(GLB cluster + PE cluster + Router cluster) との接続を変えられるのが大きな違いです。また、各PEは SIMD (x2) になっています。
PE を cluster にして、4x3 の PE clusterに分散することで、MobileNetのようなモデルでも電力効率とLatencyをよくなるようです。

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Eyeriss と Eysriss v2 の違い

2D Mesh Networkにて、PE cluster 間のデータ移動がスムーズになっています。

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2D Mesh Network

下図では、CONV、FC、だけでなく、DW CONV の対応できるようになっているのが分かります。

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CONV、FC、DW CONV

GLB cluster からRouter cluster 経由で PE cluster へのデータ移動の図がこちら
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psums の PE cluster 間の接続図がこちら
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Eyerissの時はDRAMからGLBへの圧縮・伸長をしていますが、Eyeriss v2 では 各PEへの Weight も圧縮・伸長しています。つまり、Sparse 対応

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Example of compressing sparse weights with compressed sparse column (CSC) coding

入力データに関しては、PEの中で伸長するようになっています。PEはSIMD (x2)なので、赤字 (x2) があります。

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Eyeriss v2 PE Architecture

まとめとしての比較 (Eyeriss v1が最初のASIC、v1.5 は NoC を 2D Mesh Network にしたもので PE は v1 と同じ、v2 が PEを SIMD & Weight Sparse対応)

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Eyeriss と Eyeriss v2 の比較

他のチップとの比較 (PEをSIMD x2にしたのがだ、演算精度が16bitから8bitになっているのを発見)
どのチップも200MHzで動作する。Eyeriss v1 に対して、Eyeriss v2 は、ALEXNETで10倍の性能で6倍の電力性能を達成。おまけに、MobileNetも対応している。

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他のチップとの比較

何故、16bit から 8bit になったのは、2016年から2018年の間に、Inference に関しては 8bit の精度があれば OK になったからであろうか?

ここまでで、Inferenceに関しては、RS、8bit、データおよびWeightは圧縮(伸長)、SIMD (x2)、2D Mesh Network で Mobile用ネットワークにも対応できるようになった。

2020年は、Timeloop & Accelergyについての2本のビデオ

スライドは、こちら

Timeloop の github は、こちら (NVLabs内にあるので、基本的にはNVIDIA)
Accelergy は、こちらは、MITで、基本的には、Eyeriss の DRAM <=> GLB <=> PE という構成で ハードウェアを決めていく感じですね。

左側のMAPPER部分が Timeloop 、右側のMODEL部分が Accelegry という感じ。
MAPPERである Timeloop で問題(Problem)とArchitecture、Constraintsにて、Mapspace を構築し、Mapspace に対して、Mapper parameters を入れて、Mapping したものを
Accelergy にて micro Architecture を Energy, Performace, Area を評価尺度にてて探索する感じ。

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Timeloop と Accelergy

これって、1月2日にアップした「ハードウェアを意識したNASからハードウェアの構成も一緒に決めるNASに!」に書いたHASの部分なのかな?MAPPER の Problem が Network Model で Architecture と Constrains を合わせると、NAS なんでしょうね。

最後に

ディープラーニングのハードウェアを研究している大学の研究室の多くは、FPGAに実装して評価しているところがおおいですが、
MITのVivienne Szeさんの研究室では、実際に半導体に実装し、評価を行っています。実際に実装して、評価することでしか得られない知見が次の研究につながっているんだなーと思いました。