Vengineerの妄想

人生を妄想しています。

ChipAgents と Google Gemini の違い?

はじめに

YoutubeRISC-Vの関連ビデオの覗いてみたら、ChipAgents なる会社を知りました。

なるほど。

ということは、

  • Google Gemini (個人では課金していないので、無償版)

でももしかしたら、やれることがあるのでは?と思い、聞いてみました。

NotebookLM の音声概要

ChipAgents とは

CEOが説明してくれている。

www.youtube.com

Google Gemini に聞いてみた

質問 「半導体の設計開発(RTL)の開発フローについて、詳細な説明をしてください。図(フロー図など)も入れてもらえると嬉しいです。」

Gemini の回答

はい、承知いたしました。半導体のRTL設計開発フローについて、フロー図を交えながら詳細に解説し、各工程でGeminiがどのようにサポートできるか、またその限界はどこにあるかを具体的に説明します。

半導体RTL設計開発フロー(全体像)

半導体の設計開発は、大きく「フロントエンド設計」と「バックエンド設計」に分かれます。RTL (Register Transfer Level) 設計は、このフロントエンド設計の中核をなす工程です。

以下に、一般的なRTL設計開発のフローを示します。

graph TD
    A[1. 仕様策定] --> B[2. アーキテクチャ設計];
    B --> C[3. RTL設計];
    C --> D{4. シミュレーション / 検証};
    D -- NG --> C;
    D -- OK --> E[5. 論理合成];
    E --> F{6. スタティック・タイミング解析(STA)};
    F -- NG --> C;
    E --> G{7. フォーマル検証};
    G -- NG --> C;
    F & G -- OK --> H[バックエンド工程へ];

    style A fill:#cde4ff
    style B fill:#cde4ff
    style C fill:#cde4ff
    style D fill:#cde4ff
    style E fill:#cde4ff
    style F fill:#cde4ff
    style G fill:#cde4ff
    style H fill:#b0e0e6

各工程の詳細とGeminiのサポート範囲

1. 仕様策定 (System Specification)

LSI(大規模集積回路)がどのような機能や性能を持つべきかを決定する最初の工程です。顧客の要求や市場のニーズを基に、機能、性能(動作速度)、消費電力、コストなどの目標値を定義し、仕様書を作成します。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
      • 情報収集: 関連技術や競合製品のトレンド調査、論文の要約。
      • イデア出し: 実現可能な機能のブレインストーミング支援。
      • ドキュメント作成: 仕様書のテンプレート作成や、文章の校正・翻訳。
    • サポートが困難なこと:
      • 最終的な意思決定: どの機能を実装し、どの性能目標を設定するかの最終判断。
      • 顧客との交渉: 顧客との直接的な要求仕様の調整。
      • 実現可能性の保証: 特定の技術やコスト制約下での実現可能性の完全な判断。

2. アーキテクチャ設計 (Architecture Design)

仕様書で定められた機能や性能を実現するために、LSI全体の構造(骨格)を設計します。どのような機能ブロックが必要か、各ブロックをどのように接続するか、データはどのように流れるかなどを決定し、ブロック図などを作成します。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
    • サポートが困難なこと:
      • 最適なアーキテクチャの選定: プロジェクト固有の複雑な制約をすべて考慮した上での最適なアーキテクチャの最終決定。
      • 詳細な性能見積もり: ツールを使わない段階での正確な性能や消費電力の見積もり。

3. RTL設計 (RTL Design/Coding)

アーキテクチャ設計に基づき、Verilog-HDLVHDLといったハードウェア記述言語(HDL)を用いて、回路の具体的な動作をレジスタ転送レベルで記述します。ここでの成果物がRTLコードです。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
      • コード生成: 仕様やコメントから、特定のモジュール(例:FIFO、カウンタ、ステートマシン)のHDLコードを自動生成。
      • コードの最適化: より効率的な記述方法や、合成しやすさを考慮したコードスタイルの提案。
      • 構文チェックと解説: HDLの文法的な誤りの指摘や、特定の構文の機能解説。
      • コメント生成: 既存のコードに対して、動作を説明するコメントを自動で付与。
    • サポートが困難なこと:
      • 大規模で複雑な設計: プロジェクト全体の意図を完全に汲み取った、大規模で複雑なモジュールの完全な自動設計。
      • 設計意図の完全な理解: 設計者が持つ暗黙的なノウハウや、特定のコーナーケースに対する深い配慮。

4. シミュレーション / 検証 (Simulation / Verification)

設計したRTLコードが仕様通りに正しく動作するかを検証します。テストベンチと呼ばれる検証用のプログラムを作成し、シミュレータ上でRTLコードを動かして、期待通りの結果が得られるかを確認します。設計工程の中で最も時間と労力を要する工程の一つです。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
      • テストベンチの雛形作成: 検証対象モジュール(DUT)に対するテストベンチの基本的なテンプレートを生成。
      • テストシナリオの洗い出し: 仕様書から、検証すべき機能やコーナーケースのリストアップを支援。
      • アサーションの記述支援: SVA (SystemVerilog Assertions) などのアサーション記述の生成。
      • エラーメッセージの解説: シミュレータが出力するエラーメッセージの意味や、考えられる原因を解説。
    • サポートが困難なこと:
      • シミュレーションの実行: シミュレーションツールのセットアップや実行そのもの。
      • 波形デバッグ: シミュレーション結果の波形を直接見て、バグの原因を特定する作業。
      • カバレッジ分析: コードカバレッジや機能カバレッジを分析し、検証の網羅性を向上させるための具体的な計画立案。

5. 論理合成 (Logic Synthesis)

RTLコードを、AND、OR、フリップフロップといった基本的な論理ゲートの組み合わせ(ネットリスト)に変換する工程です。この際、「タイミング制約(何GHzで動作させるか)」や「面積制約」などを与え、ツールが最適なゲートレベル回路を生成します。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
      • 合成スクリプトの生成: Synopsys Design Compilerなどの論理合成ツールで用いるTclスクリプトのテンプレート作成。
      • 制約条件(SDC)の解説: タイミング制約ファイル(SDC: Synopsys Design Constraints)の基本的な書き方や、各コマンドの意味を解説。
      • レポートの要約: 合成ツールが出力するレポート(面積、タイミングなど)の要点を抽出し、平易に解説。
    • サポートが困難なこと:
      • 論理合成ツールの操作: ツールを直接実行し、最適なオプションを選定すること。
      • タイミング違反の修正: 合成後に発生したタイミング違反(セットアップ違反、ホールド違反)の根本原因を特定し、RTLコードや制約を修正すること。

6. スタティック・タイミング解析 (STA)

論理合成後のネットリストが、設定したタイミング制約(クロック周波数)を満たしているかを静的に(=実際に回路を動かさずに)解析する工程です。回路内のすべての信号経路(パス)の遅延を計算し、違反がないかを確認します。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
      • 概念の説明: STA、セットアップ/ホールド時間、クリティカルパスといった専門用語の概念を解説。
      • レポートの読み方解説: STAツールが出力するタイミングレポートのフォーマットや見方を説明。
    • サポートが困難なこと:
      • STAツールの実行: PrimeTimeなどのSTAツールを直接実行すること。
      • 違反パスの根本原因特定: タイミング違反が発生している特定のパスについて、その根本的な原因を特定し、修正策を立案すること。

7. フォーマル検証 (Formal Verification)

シミュレーションが「テストケースで試す」動的な検証であるのに対し、フォーマル検証は数学的な手法を用いて、RTLコードと仕様(または合成前後のRTLとネットリスト)が論理的に等価であることを網羅的に証明する静的な検証です。

  • Geminiのサポート:
    • サポート可能なこと:
      • 概念の説明: フォーマル検証の仕組みや、シミュレーションとの違いを解説。
      • プロパティ記述の例示: 検証したい仕様(プロパティ)をSystemVerilog Assertionなどで記述する際のサンプルコードを提供。
    • サポートが困難なこと:
      • 検証ツールの操作: フォーマル検証ツールをセットアップし、実行すること。
      • 証明失敗のデバッグ: 等価性が証明できなかった場合に、その原因となっている箇所を特定する複雑なデバッグ作業。

まとめ

ご覧いただいたように、Geminiは半導体のRTL設計開発フローにおいて、非常に強力なアシスタントとなり得ます。特に、情報収集、ドキュメント作成、コードの雛形生成、概念の理解といった領域で、設計者の生産性を大幅に向上させるポテンシャルを秘めています。

一方で、専門的なEDAツールの操作、複雑なデバッグ、プロジェクト固有の制約を考慮した最終的な意思決定といった部分は、依然として人間のエンジニアの深い知識と経験が必要です。

Geminiを「副操縦士」として賢く活用することで、設計者はより創造的で本質的な作業に集中できるようになり、開発全体の効率化と品質向上が期待できるでしょう。

サポートができること、できないことを表にできますか?

はい、承知いたしました。 半導体RTL設計開発フローの各工程において、Geminiがサポートできることと困難なことを表にまとめました。

GeminiによるRTL設計開発フローのサポート範囲一覧

工程 ✅ サポート可能なこと ❌ サポートが困難なこと
1. 仕様策定 ・関連技術や競合製品の調査・要約\<br>・機能に関するアイデア出し支援\<br>・仕様書のテンプレート作成、文章校正 ・最終的な仕様の意思決定\<br>・顧客との直接的な交渉や調整\<br>・実現可能性の完全な保証
2. アーキテクチャ設計 ・一般的なアーキテクチャパターンの提案\<br>・機能ブロックの動作を示す疑似コード生成\<br>・性能/電力/面積(PPA)トレードオフの解説 ・プロジェクトに最適なアーキテクチャの最終選定\<br>・ツールを用いない段階での詳細な性能/電力の見積もり
3. RTL設計 FIFO、カウンタ等の標準的なモジュールのHDLコード生成\<br>・コードスタイルの最適化提案\<br>・HDLの構文チェックと解説\<br>・コードへのコメント自動付与 ・大規模で複雑なシステムの完全な自動設計\<br>・設計者の暗黙的な設計意図の完全な理解\<br>・シミュレーション結果に基づくデバッグ作業
4. シミュレーション / 検証 ・テストベンチの雛形作成\<br>・検証すべきテストシナリオの洗い出し支援\<br>・アサーション(SVA)の記述支援\<br>・シミュレータのエラーメッセージの解説 ・シミュレーションツールのセットアップと実行\<br>・シミュレーション波形を用いたインタラクティブデバッグ\<br>・カバレッジ分析と検証網羅性を向上させる計画立案
5. 論理合成 ・論理合成ツール用スクリプトのテンプレート作成\<br>・タイミング制約(SDC)の基本的な書き方やコマンドの解説\<br>・合成レポート(面積、タイミング等)の要約と解説 ・論理合成ツールの直接的な操作やオプション選定\<br>・タイミング違反の根本原因の特定と具体的な修正\<br>(コード修正、制約変更など)
6. スタティック・タイミング解析 (STA) ・STAの専門用語(セットアップ、ホールド等)の概念解説\<br>・STAツールが出力するタイミングレポートの読み方説明 ・STAツールの直接的な実行\<br>・タイミング違反パスの根本原因の特定と修正策の立案
7. フォーマル検証 ・フォーマル検証の概念や手法の解説\<br>・検証したい仕様(プロパティ)のサンプルコード提供 ・フォーマル検証ツールの直接的な操作\<br>・等価性証明が失敗した際の高度なデバッグ作業

結論として、Geminiは設計者の「知識の引き出し」や「単純作業の自動化」を担う強力なアシスタントとして機能します。一方で、専門的なEDAツールを駆使した実行・解析・デバッグや、プロジェクト全体の成功を左右する最終的な意思決定は、引き続き人間のエンジニアが担うべき領域となります。

おわりに

現状のGoogle Geminiでは、人間が実際、実行しなければいけないものは、やれない感じですね。

となると、最初の ChipAgents はどんなことをしてくれるのでしょうか?

www.youtube.com

のビデオでは、下記のようなFlow図が出てきます(説明のために引用します)。ぱっと見、実際に人がやっていることとほぼ同じで、真ん中にいる LLM Agents が人間の変わりになる感じなんでしょうかね。