Vengineerの戯言

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ボトルネックは、TSMCではなく、ASMLなんだ?

はじめに

半導体製造では、TSMCが注目されています。

TSMCが10%から20%の値上げを宣言してから、実際のチップの値上げが始まりました。需要と供給のバランスが崩れ、需要に供給が追い付かない状態なんでしょうね。

www.nichepcgamer.com

TSMCへの発注が多くなり、TSMCアメリカ本土へのFab投資は行っています。

TSMCがFabを作るには、Fabの中で使う半導体製造装置が必要です。 その半導体製造装置の中で先端プロセスに必要なのが高NA EUV露光装置というものがどうやらポイントのようです。

この高NA EUV露光装置を作れるのがASMLだけというのが最もポイントなんでと。

で、ASMLという会社とは?

gigazine.net

IntelもASMLに発注

下記の記事にもあるように、Intelも高NA EUV露光装置をASMLに発注したようです。

news.mynavi.jp

とはいえ、この高NA EUV露光装置は 2025年に量産現場で活用できるようにする感じなので、まだちょっと先です。

下記の記事に詳しく書いてあった(追記、2022.01.26)

semiwiki.com

ASML は絶好調

下記の記事にあるように、ASMLは絶好調のようです。

売り上げは前年度比33.1%増の186憶1100万€(約2兆4000億円、130円/1€換算)、純利益は65.5%増の58億8300万€(約7648億円)です。

news.mynavi.jp

納品した台数が、新品で286台、中古が23台。ざっくり1台100億円です。

下記の記事は、2020年第二四半期の業績ですが、この記事の中に、EUV露光装置1台は1.54憶€(190億円)ということです。これから出てくる 0.55NAのEUVは、1台390憶円のようです。倍ですね。

news.mynavi.jp

2021年は、42台のEUV露光装置を出荷したようなので、これだけで8000憶近い売り上げになります。

下記にいろいろと書いてあった。ASMLの2020年の出荷台数は36台(2021年は42台)に対して、受注残が56台。

TSMCは毎年30台を要求しているよ模様。実態は2019年が25台から2020年で61台と36台増。2020年のASMLの出荷台数は36台なので全部TSMCに納品。。。

eetimes.itmedia.co.jp

下記の記事によると、

2021年のEUV露光装置の出荷台数は、48台(上の記事では36台だったが)で、TSMCは22台、Samsung Electronicsは15台。その他は、DRAM用に SK HynixとMicron Technology。そして、Intel

2022年の出荷台数は51台(TSMCは22台、Samsung Electronics18台)

news.mynavi.jp

TSMCは、2017年に2台、2018年に5台、2019年に13台、2020年に20台、そして2021年に22台の累計62台

Samsung Electronicsは、2017年に2台、2018年に3台、2019年に5台、2020年に8台、そして2021年に15台の累計33台

ボトルネックは、ASML

半導体製造は、TSMCSamsungIntelだが、EUV露光装置は ASML のみ

同じく露光装置のニコンキヤノンは、開発段階で撤退してしまっており参入予定がないため、今後、ASML独占のEUV露光装置の奪い合いが先進半導体メーカー間で激化する見込みである。

ASMLが供給できるEUV露光装置は限られているので、このASMLがボトルネックになりますね。

2nm 以降も大丈夫?

下記の記事によると(引用)、

 ASMLは今後の予測として、「半導体メーカーは、新技術の適用により生産拡大を実現していく上で、最初に0.55NAを、最先端のウエハー層に向けたコスト削減効果の高いシングル露光EUVプロセスに適用しながら、マルチパターンの0.33NAと、成熟プロセス向けの旧式リソグラフィ技術とを併用することになるだろう。シングル露光の0.55NA技術は、今後約6年間で限界に達するとみられるため、半導体メーカーは、再びマルチパターニングを使用することで、トランジスタ密度をさらに高め、より高度なプロセスノードを実現できるようになるだろう」と述べている。

ほう。マルチパターンを使うことで、技術の延命できるんだ。

eetimes.itmedia.co.jp

下図はASML Investor day 2021のEUV Products and Business Opportunityの15ページからの引用です。EUV 0.55 NAの装置は2023年に EXE:5000というのが出て、2年後にEXE:5200が出るスケジュールになっていますね。

f:id:Vengineer:20220121095452p:plain

下図の17ページ目で、Non EUVに対して、EUVはいろいろとメリットがあり、EUV 0.33 NAから EUV 0.55 NAになると、メリットがあるということですね。

追記、2022.01.26、下記の記事によると、0.55NAになると、

  • 0.55NA enables 1.7x smaller features and 2.9x increased density
  • Higher imaging constrast enabes 40% improve in Local CDU
  • 1.4x reduced pattern variability at 1.4x lower dose

  • Lower defect density by simper process : Single patterning enables > 10% lower critical mask count for Logic & DRAM

  • ~15% Shorter cycle time : 15% faster time to yield and increased flexibility for market changes average for Logic and DRAM
  • ~15% patterning cost reduction For both Logic and DRAM
  • ~20% less patterning fab space : Needed for same fab output average for Logic and DRAM

semiwiki.com

露光装置について

下記のビデオで露光装置というは何ぞやということを説明してくれています。

www.youtube.com

ASMLのEUVプロダクトのページ。いろいろ解説されていて、おもしろい

EUV lithography systems – Products | ASML – Supplying the semiconductor industry

EUV光源装置メーカー(TRUMPF)のページ

大手企業との共同開発によりTRUMPFは世界でも独自のCO2レーザ装置を生み出しました:リソグラフィシステムの世界大手メーカーASMLは、インテグレータとして滴下用のコンポーネントとスキャナを担当し、EUVレンズはツァイスのものを使用しています。この装置では毎時平均100個以上のウェハーを加工でき、連続生産には十分です。このEUVリソグラフィは技術的に価値があるだけでなく、世界中のチップメーカーにとって非常に経済的です。

www.trumpf.com

日本のレーザーテックという会社がマスク関連(DUV および EUV)の製品を開発販売しているようです。ASMLにも納めているようです。株価が3年で30倍ぐらいになっています。持ち株で500万円もっていれば、1億5000万円になり、税金引いても1億円、手元に残りますね。とは言え、職と株を同じものに掛けるのリスクヘッジできないので、やらない方がいいと思っています。昔、エンロン事件で多くの人が職と持ち株を失いましたので。。。

EUVの先は?

What ASML Has Next After EUV

www.youtube.com

おわりに

TSMCボトルネックであるのではなく、ASMLがボトルネックだということがわかりました。

ニコンキヤノンが開発を続けていて、うまくいっていれば、チャンスがあったのにね。。。

追記、2022.01.26、下記の記事の中では、

Perhaps the biggest constraint is in lens manufacture as Zeiss in Germany doesn’t want to go as fast as demand would otherwise take them, likely for fear of the cyclical nature of the industry.

とあります。Lens、大切ですね。

semiwiki.com